特定技能外国人材受け入れ制度 就労者の増加が続く背景とは

在留資格「特定技能」による外国人材の受け入れ制度創設から1年半がたった。建設分野では3月にフィリピンで予定していた技能評価試験が新型コロナウイルス感染症の影響を受けて延期となったが、国内の技能実習からの移行など特定技能で働く外国人は堅調に増加を続けている。直近では初の国内での技能評価試験の実施や、ベトナムの送出機関との契約締結など特定技能に関連した動きが活発化している。

出入国在留管理庁のまとめによると、6月末時点の建設分野での特定技能による在留外国人数は374人だった。全分野合計の受け入れ総数5950人の6.3%を建設分野が占める。

入管庁審査の前段に行う、国土交通省による特定技能外国人受け入れ計画の認定状況は8月28日時点で計1173人だった。オンライン申請を開始した2020年度に入ってから順調に認定件数が増加し、制度を開始した19年度からの通算では認定人数が1000人を突破した。

受け入れ人数の増加に伴い特定技能外国人の活躍に焦点が当たることが多くなった。国交省の優秀外国人建設就労者表彰では、今年度2人の特定技能外国人が受賞。技術力だけでなく、後輩の外国人材の指導に当たるリーダーとしての役割も担い、所属企業からの信頼が厚い様子がうかがえた。

技能実習がない職種でも特定技能による受け入れに向け、動き出した。建設技能人材機構(JAC)は8月28日に国内初となる、鉄筋継手の技能評価試験を静岡県富士宮市の富士教育訓練センターで実施した。技能実習や外国人建設就労者受入事業(特定活動)などで国内に在留している受験生33人が受験した。

新型コロナの影響で海外で試験ができないため、建設分野の特定技能の就労者は事実上、技能実習などからの移行者に限られ、技能実習がない職種では受け入れが難しい状況にあった。そこで20年度から技能実習など活動計画の作成が求められる在留資格で活動中の外国人の受験が可能となったことを契機に、技能実習がない鉄筋継手で先行して国内での試験に乗り出した。

鉄筋継手の試験に次いで、15日には土工の国内試験も予定している。土工も技能実習がなく、関連職種の技能実習生や既に他職種の特定技能で就労している外国人が受験する。52人から受験申し込みがあり、注目の高さがうかがえる。

JACは試験実施だけでなく、特定技能で働きたい外国人と受け入れ企業をマッチングするサービスを本格的に開始した。想定されるのは技能実習や特定活動で就労中の外国人のうち、所属企業が特定技能で雇用しないなど、特定技能に移行できないケースだ。

外国人が特定技能に移行して日本国内で就労継続を望んでも、所属企業が特定技能の受け入れ手続きをしなければ、技能実習修了後に帰国せざるを得ない。マッチングサービスを活用することにより、特定技能に移行を希望する外国人や所属企業がJACに対し求職相談を行うスキームを設けた。一定のスキルと日本語能力、国内での就労実績を持った外国人材を雇用したい建設企業とのマッチングが可能となる。

JACのホームページで外国人から求職相談を受け付け、受け入れを希望する企業とのマッチングを無料で行う。求職相談に当たっては、国際建設技能振興機構(FITS)と連携し、日本語に不安がある外国人に対して、母国語相談ホットラインを通じた情報提供や求職票の作成など就職を支援する。

海外での教育訓練・試験実施も8月末に進展が見られた。JACは8月27日にベトナムで教育訓練を実施する訓練校5校と提携する送出機関と労働者提供契約を締結。これを受けて、現地では10月から訓練生の募集を開始し、11月から日本語の訓練を始めることが可能となった。

JACは19年9月30日に国交省と連携の下、現地の5つの訓練校と業務提携覚書を締結し、教育訓練と技能評価試験の実施に向けた調整を進めてきた。ベトナム政府による費用負担ガイドラインの策定作業や世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により、調整に時間を要していたが、今回、訓練校と提携してベトナム国外での就労を仲介する送出機関との契約が締結できたことで、訓練生の募集など具体的な手続きが動き出した。

訓練は「準備コース」に位置付ける日常会話レベルの日本語教育を11月から実施。その中で基礎の日本語試験と生活態度を含めた適性審査に合格した訓練生を「特定技能水準コース」に選抜し、21年2月から日本式施工の技能訓練を行う。

特定技能水準コースを修了した訓練生にはJACが技能評価試験を実施。試験実施の判断はベトナム政府が行うが、国交省とJACは3月にも試験を実施したい考えだ。技能試験実施後は、4-6月に実践レベルの日本語教育・試験を行い、合格者を決定する。

特定技能試験の合格者とその受け入れを希望する日本の建設企業とのマッチング(無料職業紹介)をJACが7月に行い、雇用契約が成立すれば、受入計画・入国の審査など手続きを経て、11月ごろからの入国・就労開始をイメージする。

建設分野もようやく本格的に動きだしたようです。

<参照:建設通信新聞からの発表資料より>