今回は「特定技能」の対象分野になっている「造船・船用工業分野」について考えていきます。
まずは、公表されている資料をもとに、造船・舶用工業分野の現状や特定技能の対象となった経緯を見ていきましょう。
造船・舶用工業分野は人手不足
造船・舶用工業の業務に従事することができる「特定技能」ビザで外国人を受け入れる理由のひとつとして、造船・舶用工業分野の人手不足をあげることができます。
造船・舶用工業は、裾野の広い労働集約型産業として、国内に生産拠点を維持し、 その殆どが地方圏に存在していますが、「少子高齢化・生産年齢人口の減少」が急激に進んでいることに加えて、若者の地方から都市部への流出により、日本人の若手就労者の確保に苦労している状況です。
造船・舶用工業分野における主な職種の平成 29年度の有効求人倍率は、
- 溶接(金属溶接・溶断工) 2.50倍
- 塗装(塗装工)4.30 倍
- 鉄工(鉄工、製缶工) 4.21倍
- 仕上げ(めっき工、金属研磨工)4.41倍
- 機械 加工(数値制御金属工作機械工) 3.45倍
- 電気機器組立て(電気工事作業員) 2.89 倍
となっているなど、深刻な人手不足状況にあります。
造船・舶用工業分野で「特定技能」の外国人を受け入れる必要性
国内人材確保のための取組としては、造船工学の教材作成や専門指導力向上のための研修プログラム開発等、若手の造船業への進出・定着や女性が働きやすい現場環境の改善に取り組んでおり、さらに、多様な勤務形態の確保を通じた積極的な高齢者の雇用等にも取り組むなど、様々な取り組みが行われ、就労人口の純増を目指しています。さらにこの造船・舶用工業分野が地域の経済・雇用にも貢献している非常に重要な産業であることを踏まえ、造船・舶用工業の持続的な発展を図るためには、造船・舶用工業について一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることが、造船・舶用工業の基盤を維持し、今後も発展させていくために必要不可欠であると考えられています。
特定技能「造船・舶用工業」について
特定技能は全部で14業種あり、特定技能1号と特定技能2号の2つに区分されます。
14業種ある特定技能のうち、特定技能2号に指定されている業種は現在(2020年4月20日時点)で建築業と造船・舶用工業の2業種のみで、特定技能「造船・舶用工業」は特定技能2号の2業種の1つに指定されています。
特定技能1号「造船・舶用工業」と特定技能2号「造船・舶用工業」の大きな違い
特定技能1号
在留期間通年5年、家族帯同不可、要日本語能力+技術水準
特定技能2号
在留期限なし(更新可能)、家族帯同可能、要技術水準
特定技能2号は、建設業や造船・舶用工業において熟練した技能をもつ外国人が対象の資格です。
特定技能1号の在留期間は最長通算5年で帰国することが前提となり、外国人労働者の家族帯同はできませんが、特定技能2号は最長3年の在留資格を何度でも更新可能で、家族を呼び寄せることもできます。
また特定技能1号は技能試験に加えて日本語能力試験を受ける必要ありますが、特定技能2号は1号からの昇格が前提となっているので日本語能力試験を受ける必要はありません。
さらに1号を取得した外国人を採用する際、受入れ企業は登録支援機関等の設置が求められますが、2号の場合、こうした支援機関の設置は不要です。
特定技能「造船・舶用工業」の全6業務の内容について
特定技能「造船・舶用工業」は現在(2020年4月20日時点)6種の業務で区分されています。
特定技能1号と2号の違いは、特定技能1号が作業に従事するのに対し、特定技能2号は、複数の作業員を指揮、命令、管理する監督者としての業務が追加されます。
以下に記す6業務では、特定技能1号はすべての業務、特定技能2号は「溶接」のみとなります。
特定技能「造船・舶用業」で定められる6業務
①溶接(手溶接、半自動溶接)
②塗装(金属塗装作業、噴霧塗装作業)
③鉄工(構造物鉄工作業)
④仕上げ(治工具仕上げ作業、金型仕上げ作業、機械組立仕上げ作業)
⑤機械加工(普通旋盤作業、数値制御旋盤作業、フライス盤作業、マシニングセンタ作業)
⑥ 電気機器組立て(回転電機組立て作業、変圧器組立て作業、配電盤・制御盤組立て作業、開閉制御器具組立て作業、回転電機巻線製作作業)
また、従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えないとされています。
特定技能「造船・舶用工業」を取得するには?
通常、在留資格「特定技能」を取得するには、2つの方法があります。
1つは、特定技能評価試験と日本語試験であるに合格することで取得する方法。
もう1つは、技能実習2号を修了して、在留資格「特定技能」に移行する方法です。
1. 特定技能評価試験+日本語試験に合格する
技能試験:「造船・舶用工業分野特定技能1号試験」に合格、
または「技能検定 3級」 に合格
日本語試験:「国際交流基金日本語基礎テスト」合格、
または「日本語能力試験のN4以上」に合格
特定技能1号「造船・舶用工業」の業務別に必要な試験については以下のようになっています。
特定技能「造船・舶用工業」6業務|①溶接
造船・舶用工業分野特定技能1号評価試験(溶接)
特定技能「造船・舶用工業」6業務|②塗装
造船・舶用工業分野特定技能1号評価試験(塗装)又は技能検定3級(塗装)
特定技能「造船・舶用工業」6業務|③鉄工
造船・舶用工業分野特定技能1号評価試験(鉄工)又は技能検定3級(鉄工)
特定技能「造船・舶用工業」6業務|④仕上げ
造船・舶用工業分野特定技能1号評価試験(仕上げ)又は技能検定3級(仕上げ)
特定技能「造船・舶用工業」6業務|⑤機械加工
造船・舶用工業分野特定技能1号評価試験(機械加工)又は技能検定3級(機械加工)
特定技能「造船・舶用工業」6業務|⑥電気機器組立て
造船・舶用工業分野特定技能1号評価試験(電気機器組立て)又は技能検定3級(電気機器組立て)
特定技能2号では、「造船・舶用工業分野特定技能2号評価試験」もしくは技能検定1級に合格する必要があります。※現在は溶接のみについて、試験を作成予定。
この試験を合格すると、熟練した技能を有する外国人労働者として、特定技能2号が取得することができます。また特定技能2号は、試験合格に加えて、造船・舶用工業において複数の作業員を指揮・命令・ 管理する監督者としての実務経験を2年以上有することが要件となっています。
特定技能「造船・舶用工業」|①溶接
造船・舶用工業分野特定技能2号評価試験(溶接)及び、監督者の実務経験(2年以上)又は技能検定1級(型枠施工)
2.技能実習2号を修了し、在留資格「特定技能」へ移行する
技能実習2号を修了した者については、当該技能実習 で修得した技能が、1号特定技能外国人が従事する業務で要する技能と、技能の根幹となる部分に関連性が認められるため、「特定技能1号」ビザに移行することができます。
技能実習との具体的な関連性については、以下を参考にしてください。
参照:国土交通省「造船・舶用工業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」より
特定技能「造船・舶用工業」の受験資格について
特定技能「造船・舶用工業」を技能試験と日本語試験により取得する際は、国内で受験する場合と国外で受験する場合の2種類の受験方法があります。
日本国内で受験する際に必要な条件
・在留資格を有し、試験日において満17歳以上であること
また、日本国内で受験する場合には、上記の条件に加えて何らかの在留資格を有することが必要です。ただし,試験の合格をもって「特定技能」の在留資格が付与されることを保証したものではありません。試験合格者に係る在留資格認定証明書交付申請又は在留資格変更申請時の審査により在留資格認定証明書の交付や在留資格変更の許可を受けられないことがあります。また、在留資格認定証明書の交付を受けたとしても,査証申請については,別途外務省による審査が行われるため、査証の発給を受けられないことがあります。
日本国外で受験する際に必要な条件
・試験日において満17歳以上であること
企業が特定技能「造船・舶用工業」の外国人を雇用するには?
造船・舶用工業分野の特定技能所属機関は、国土交通省が設置する「造船・舶用工業分野特定技能協議会」の構成員になる必要があります。また協議会に対して必要な協力を行い、指導、調査に対しても協力するよう、法務省の方針に明記されています。
協議会加入手続き
国土交通省のホームページ【造船・舶用工業分野における事業者の確認及び協議会加入手続き】の項目をご確認ください
さらに、受け入れ要件として、国土交通省からの「造船・舶用工業分野に係る事業を営む」企業であることの認定が必要になります。
また特定技能人材の支援も必要となります。これは自社で行う他、登録支援機関に委託し、特定技能人材の支援計画作成、実施を代行させることも可能です。
雇用形態
直接雇用のみ。
※派遣雇用は認められていません。
この記事では、在留資格「特定技能」の14業種の中の1つ「造船・舶用工業」について詳しく紹介しました。特定技能の申請や発給は、上記に記載した条件以外にも、細かい条件や手続きが必要になります。
特定技能ビザの申請・発給につい分からない事や不安なことがあればラクル合同会社へご相談ください。出入国在留管理庁へ申請ができる申請取次者が対応いたします。