特定技能 初の国内試験『鉄筋継手』ー建設分野

建設技能人材機構(JAC)は28日、建設分野で初となる在留資格「特定技能」に基づく技能評価試験を静岡県富士宮市の富士教育訓練センターで実施した。技能実習や外国人建設就労者受入事業(特定活動)などで国内に在留している受験生33人が試験区分「鉄筋継手」を受験した=写真。

審査を経て9月9日に合格証明書を発行、11日に結果をJACのホームページ(HP)に公開する。特定技能1号評価試験の合格者が初めて誕生することとなる。

試験開催にあたって挨拶したJACの才賀清二郎理事長は「JACとしても初めての試験であると同時に、新型コロナウイルス対策もあり、手探りの状況だった」と振り返りながら、「実施して良かった。きょうの結果を見ながら9月15日の土工試験もうまくいくように段取りしたい。今後は国内だけでなく、ベトナム、フィリピンともに環境が整えば試験実施を考えているが、まずは国内でできる準備を着実に進め、数を増やしていきたい」と述べた。
来賓として試験を視察した国土交通省の美濃芳郎官房審議官は、「受験生は実力を遺憾なく発揮して試験に合格してもらい、建設業の貴重な担い手である特定技能外国人として活躍してほしい」と話した。

受験した外国人に話を聞くと、「資格をいろいろ取りたい。いまの会社はとても良い会社なので、自分もベトナムに帰ったら圧接の会社をつくりたい」(ベトナム出身・技能実習生)、「将来は家族を日本に連れていきたい。仕事をレベルアップして、後輩にも教えていく」(フィリピン出身・技能実習生)など、特定技能での就労に期待を寄せる声が多かった。

なお、9月15日に同センターで行う「土工」試験は14カ国・52人が受験する予定だ。

特定技能の国内試験は、2020年度からの受験資格の緩和により、これまで受験を認めていなかった技能実習など活動計画の作成が求められる在留資格で活動中の外国人の受験が可能となったことを受けて実施した。
新型コロナの影響で海外での試験ができないことから、建設分野の特定技能の就労者は現状、技能実習などからの移行者に限られ、技能実習がない職種では受け入れが難しい状況にあった。そこで受験資格の緩和を機に、技能実習がない鉄筋継手で先行して国内での試験に乗り出した。
例えば、鉄筋継手と業務内容で関連性の高い「鉄筋施工」の技能実習生が「鉄筋継手」の技能試験に合格すると、技能実習修了後に特定技能「鉄筋継手」での就労が可能となる。技能実習修了者は日本語試験が免除されることから、あらかじめ試験に合格しておくことでスムーズに移行できる。

 

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【ベトナム】特定技能外国人受入/送出機関と協力の枠組み決定

在留資格「特定技能」に基づく、ベトナムでの教育訓練・試験の実施に向けた具体的な手続きがスタートを切った。建設技能人材機構(JAC)は8月27日に同国で教育訓練を実施する訓練校5校と提携する送出機関と労働者提供契約を締結。これを受けて、現地では10月から訓練生の募集を開始し、11月から日本語の訓練が始まる。2021年度に入国・就労を開始するため、20年度内の技能試験実施を目指す。

JACは19年9月30日に国土交通省と連携の下、現地の5つの訓練校と業務提携覚書を締結し、教育訓練と技能評価試験を実施に向けた調整を進めていた。ベトナム政府による費用負担ガイドラインの策定作業や世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により、調整に時間を要していたが、今回、訓練校と提携してベトナム国外での就労を仲介する送出機関との契約が締結できたことで、訓練生の募集など具体的な手続きが動き出した。
今後のスケジュールは、JACが9月に会員企業の求人情報をとりまとめて、送り出し機関と共有。送り出し機関は求人情報をもとに10月から訓練生を募集し、各訓練校で訓練を開始する。訓練は「準備コース」に位置付ける日常会話レベルの日本語教育を11月から実施。その中で基礎の日本語試験と生活態度を含めた適性審査に合格した訓練生を「特定技能水準コース」に選抜し、21年2月から日本式施工の技能訓練を行う。
特定技能水準コースを修了した訓練生にはJACが技能評価試験を実施。試験実施の判断はベトナム政府が行うが国交省とJACは3月にも試験を実施したい考えだ。技能試験実施後は、4-6月に実践レベルの日本語教育・試験を経て、合格者を決定する。
特定技能試験の合格者とその受け入れを希望する日本の建設企業とのマッチング(無料職業紹介)をJACが7月に行い、雇用契約が成立すれば、受入計画・入国の審査など手続きを経て、11月ごろからの入国・就労開始をイメージする。
ベトナムでの教育訓練・試験は特定技能の対象職種のうち、▽型枠施工▽左官▽コンクリート圧送▽トンネル推進工▽建設機械施工▽土工▽屋根ふき▽鉄筋施工▽鉄筋継手▽内装仕上--10職種。JACと業務提携覚書を締結している都市建設短期大学(ハノイ市)、第一建設短期大学(同)、建設機械短期大学(同)、ホーチミン建設短期大学(ホーチミン市)、ミエンタイ建設大学の5校で実施する。

<参照:建設通信新聞からの発表資料より>