特定技能の業種追加の動き:コンビニ・トラック・廃棄物処理業界

自民党の外国人労働者等特別委員会(片山さつき委員長)は17日、新在留資格「特定技能」の対象業種にコンビニエンスストアを加えることを柱とする提言を取りまとめた。政府が7月に策定する経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に反映させるよう求める。

アルバイトでコンビニ店員として働く留学生の労働には、原則週28時間の上限がある。しかし、複数の従業員のまとめ役を担う外国人も増えているため、こうした外国人がフルタイムで働ける仕組みを求める声が業界から上がっていた。

トラック運送、産業廃棄物処理については、将来的な特定技能への移行を視野に外国人の活用拡大を要請。中国による統制強化のあおりで国際金融センターである香港から人材流出の動きがあることを踏まえ、金融を専門とする高度な人材の受け入れも求める。

コンビニ

コンビニ

トラック

廃棄物処理業界

人材活用に関する自民党の提言」が紹介されています。

この中で、「特定技能」対象職種に「コンビニエンスストア」を追加するように求めています。

他に、「トラック運転や配達荷物の仕分け」「産業廃棄物処理」も将来的に追加されるよう提言に明記するとのことです。

「特定技能」制度は、2019年4月に慢性的な「現場作業の人材不足解消」を目的に、「介護」「農業」「製造業」「建設業」「宿泊業」「飲食業」など「14業種」で開始されました。

5年間で「約35万人」、初年度として2020年3月末までに「約4万人」の計画でしたが、その1割の「3,987人」に留まっています。また、4月に予定していた「海外試験合格者の来日」が「新型コロナウィルス感染拡大」により延期になっています。ただし、技能実習生が多い「ベトナム」からは、感染者数が少ないこともあり、7月から徐々にですが、来日できるようになりそうです。

外国人に依存しているコンビニ業界

コンビニ業界はいろいろな意味で現在岐路に立っています。

この中で「人手不足の対応」として他の業界よりも多くの外国人(多くは留学生のアルバイト)を活用しています。

店頭でのレジ打ち作業は目につきますが、それ以外に「弁当や惣菜作り」「倉庫での商品の仕分け作業」のようなバックヤードで働いている方も多くいます。

多くの外国人留学生を雇っているコンビニでは、その管理のために、同国の高度人材(大学卒業者など)を通訳として雇っているところもあります。

一例として、コンビニで売られている「おにぎり」について示します。

・お客からお金を徴収するレジのスタッフは外国人

・工場から運ばれたおにぎりを検品し棚に並べる

・おにぎりをつくる製造ラインでも外国人の力がないと動かない

・おにぎりの原材料の「お米」は農家で働く「外国人技能実習生」の力

・おにぎりの具の「おかか」のカツオは「外国人技能実習生」が漁に出て釣ってきています

このように、原材料から、おにぎり作り、陳列、販売まで外国人の力で成り立っています。

正規の在留資格を得ることができなかったコンビニ業界

コンビニ業界は、以前から、「外国人材の活用」に関して様々な策を実行してきました。

技能実習制度への参画の働きかけ(2013年から検討)

東南アジアでの店舗展開(教育施設も設置・運営)

・日本に来る留学生への奨学金の支給

これらを実施しましたが、正規の在留資格を得ることができず、「留学生の資格外活動(アルバイト)」でしか外国人材を雇うことができませんでした。

昨年から実施の「特定技能」制度への参画に関しても働きかけを行ったとのことですが、最初の14業種には設定されませんでした。

昨年11月に福岡市で開催されました「外国人労働者受入れと日本の未来」のシンポジウムで「セブンーイレブン・ジャパン」の外国人材活用プロジェクトの責任者の方が、「特定技能」制度への参画について取組み内容を説明されました。

その中では、個別のオーナーや店に任せるのではなく、本社が主体になって、技能や日本語の教育を行い、特定技能1号が終了(5年)後についても検討されていました。

その話から、直ぐにでも(今年の4月)、「コンビニの特定技能」がスタートされると思っていましたが、法律・制度が改定されるのは簡単ではないようです。

「コンビニ業界×特定技能」のインパクト

コンビニ業界が特定技能制度に参画した場合、3つの大きなインパクトがあると思います。

1 コンビニ業界の人手不足の解消

先に示したように現在のコンビニは「外国人留学生のアルバイト」で支えられている面があります。

「特定技能」が認められれば、アルバイトの就労時間制限(週:28時間)の枠もなくなりますので、効率的な外国人材の活用ができます。

2 外国人留学生の日本での就労

留学生のかなりの方が、コンビニでアルバイトをしています。「外国人はまじめでよく働く」と店長(オーナー)は、信頼をおいています。また留学生も店長を慕い相互の信頼関係を築いています。当社にも何人かのオーナーの方が、アルバイト留学生の進路について親以上に親身になって相談に来られます。

コンビニの特定技能が認められたら、これまで日本で就職先がなく、母国に帰国していた多くの留学生が日本に留まることができると考えています。

3 他の業界への影響

現在、留学生の多くが「外食業」「宿泊業」の特定技能の試験を受けています。現在は「コロナウィルス感染拡大」により、この両業種は来客数が大幅に減り、外国人を雇うことができていません。コロナの影響が収束後、また人手不足になる可能性があります。コンビニの特定技能が認められると、「コンビニ」に人が集中し、「外食業」「宿泊業」に人が集まらない可能性もあります。

 

コロナウィルス感染拡大の影響で、しばらくの間、外国から「技能実習生」「特定技能」「(大学卒業の)高度人材」などを呼び寄せるのが難しい状況です。

営業自粛、製造・工事の延期などで、休業処置が実施され、それに伴い人手が余っている企業、業種がでてきていますが、今後、社会・経済活動が回復するにつれ、「人手不足」の問題が浮かび上げってきます。

日本は、少子高齢化が進み、確実に日本人の労働人口が減少します。これを補うには、外国人材に期待する必要があります。

「コロナウィルス」が「外国人材の活用」に与える影響は、予測しにくい状況ですが、長期的には外国人の方が活躍する場は増えていくと思っています。

注) ※2020年7月20日追記:
政府は外国人の在留資格「特定技能」の対象業種の拡大を巡り、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の原案に自民党が求めていたコンビニエンスストアの追加明記を見送りになりました。