型枠職種
日本は地震国であるため、人の命や財産を守るには耐震性にすぐれた鉄筋コンクリート造の建物が必要であることはいうまでもありません。鉄筋コンクリート造の建物をつくるために不可欠な職種が型枠大工です。
日本で鉄筋コンクリート造の建物が初めてつくられたのは 1905 年ころといわれます。そのころはまだ煉瓦造や石造の大型建物が多く存在していましたが、その後の 1923 年に発生した関東大震災によって、鉄筋コンクリート造の耐震・耐火性が実証されました。
鉄筋コンクリート造の建物が本格的に普及したのは戦後の 1950 年ころからです。当初は木造大工が兼任で型枠を施工していましたが、1955 年ころには専門の型枠大工が登場しました。
高度経済成長期には、多くの共同住宅、官公庁舎、文化施設などが鉄筋コンクリートでつくられるようになり、鉄道や高速道路、橋梁などにも数多く使われるようになりました。このころには専門の型枠解体工も現れ、建て込みと解体が分業化されるようになりました。
型枠工事は建物の肉体というべきコンクリート造の躯く体たいをつくる重要な部分をになっています。とび工が足場を架設し、鉄筋工が鉄筋を組み、型枠大工が型枠を取り付け、土工がコンクリートを流し込み、固まるのを待ってから、型枠解体工が型枠を外し、コンクリート躯体ができあがります。
型枠自体は建物の完成時には残りませんが、建物の出来栄えに大きな影響を与えます。技能が劣る型枠大工が担当すると、コンクリートが曲がったり、構造の強度も確保できないばかりか、いったん壊して、つくり直さなければならず、工期や金銭的にも大きな損失になります。
しかし、型枠大工は重要なわりに、とび工や鉄筋工に比べて社会的な認知度が低い職種です。ひとくちにコンクリートを流し込むための枠をつくる仕事といっても、施工図を見て加工図をつくり、木材を切り、型枠を下ごしらえし、現場に持ち込んで正確に建て込みます。もちろん、液体状のコンクリートを流し込んでも変形しない強度の型枠でなければなりません。
図面を読み取る力、材料、力学、コストパフォーマンス、安全など、型枠大工に求められる能力は広範囲にわたります。それだけ建設現場における役割が大きな職種なのです。
鉄筋コンクリート造の躯体は通常、外装はタイルや石、内装はボードや壁紙で隠されて見えなくなりますが、文化施設や個人住宅などでは、コンクリートの地肌をそのまま見せる化粧打ち放しを見かけます。化粧打ち放しこそ型枠大工の腕の見せどころです。型枠工事の出来が建物の印象を左右するといっていいでしょう。
皆さんが毎日過ごしているまちなかに型枠大工の技術が生きています。木造住宅の基礎、マンション、大型ショッピング施設の地下や駐車場、高速道路や鉄道の高架など、いたるところで型枠工事の成果を見ることができます。 これからは、老朽化した建物の建て替え、インフラ整備など、型枠大工の出番はますます多くなります。このように社会から必要とされている職種ですが、型枠大工の減少、高齢化に歯止めがかかりません。
型枠大工についてわかりやすく解説したテキストを作成してみました。ぜひ、この機会に型枠大工への新しい力となっていただけるよう、技術習得のお役に立てれば幸いです。
2016年3 月吉日
一般社団法人日本型枠工事業協会 会長
教育テキスト
http://www.nikkendaikyou.or.jp/ssw/ka_tutorial_1.pdf
特定技能評価試験 サンプル問題
http://www.nikkendaikyou.or.jp/ssw/ka_sample.pdf
特定技能評価試験 実技サンプル問題
http://www.nikkendaikyou.or.jp/ssw/ka_skilltest.pdf